第33章 パラノート廻転子
 巨大な空間にいた。落ちてるのか、浮いてるのか。空間は成長を続けているような気がした。 ただでさえ上下がわからない模様がただよっているのに、左右の区別がつくのはまだ意識があるってことか。 ビーズをもっともっと小さくしたような、そんな感触が指の間にあった。 空間がさらに大きくなるにつれ、指の間のものはさらに小さくなって、なくなりそうな気がした。 ところが今度は、小さくなっていくビーズに意識が追従していた。 ビーズは小さくなるが、感触が消えることはない、空間も成長していた。 はっきり云ってどっちでもよかった。しかし教科書には双方をしっかりと把握することとある。 フランス語とスペイン語を同時に発音するよりも簡単で、赤と青の糸を同時に断ち切るより難しい。 命題としては破綻しているが、問題としてはこれ以上単純なものはない。 そんなことを確信していることが失敗だった。

 明かりが差した、と同時に自分の体が液体に浮いているのを思い出した。 (点数なんてどうでもいいか)全身を撫でるように、液面がゆっくりと下がっていく。 全体のイメージをつかむことはできた。初めてのシミュレーションにしては上出来だと思う。 ゆっくりと起き上がると、ガラスの向こうで何か書かれたノートをこちらに提示している。 そこには「94点!」とあった。なんとなく体がべたついている。 おそらく汗が液体の中に溶け込んだせいだろう、高得点もそのためだ。 どうやら組成の組みなおしからやり直さなければいけないらしい。 保護液につからなかったことを後悔した。

 (不倫とか浮気とか、そういうことではなくて、この場合はたぶん、映画なんかでよくある、 爆弾の解体シーンが思い起こされたのではないか。前者がそうだということも考えられるが、 そんなに経験があるわけではないので、その可能性は低い。 若い彼女にそれらのイメージが存在するとは考えにくい):35ページより抜粋


第32章 江戸酔いGIRL

第31章 日常的には非日常
 「バイナリーランド」っていうビデオゲーム知ってるかい? 2人のキャラをそれぞれの迷路で同時に動かすんだ。 それを仮想現実でやったらどうなるか。 そんなところに興味が出て来てね。 今、彼に試してもらってるんだ。

第30章 世界の歩き方
 水の上の歩き方。
 雲の上の歩き方。
 月の上の歩き方。
 夢の中の歩き方。